だから僕は街を歩いていても人間観察だけでなく動物の行動にも興味がある。
今回の話は特に治療に役立つ話ではないが僕のそういう日常の中で経験したお話のひとつ。
仕事場に行く途中のこと。駅前広場には鳩がたくさん群れていて僕の目には何もありそうにない地面をしきりに啄んでいる。鳩は人間と一定の距離感を持っていて自分たちの方に人間が来るとまず人間を中心にさざ波が伝播するように輪が広がって離れていく。それよりも人間の近づく速度が速いと一斉に羽ばたいて逃げてしまう。
いつもそうだ。鳩はそういうものだと思っていた。あの鳩を見るまでは。
その鳩は一羽だけ群れから外れて地面を啄んではいないが地面をじーっと見ている風だった。何となく気になって足を忍ばせて近づいてみた。初めてすることではないのでこの後鳩がどういう行動に出るかは判っているのだがついやってみたくなるのは僕が子供っぽいからだろう。大人げないと言われそうだがついやってしまう。
普通だったらそろそろ逃げ出す距離になったがその鳩はいっこうに動こうとしない。
??(気づいていない??!!)
もう2m以内まで近づいてしまった!あと3・4歩で蹴飛ばすか踏んづけてしまう距離だ!
頭の中でこのまま真っ直ぐ進むべきか一瞬迷ったが鳩がどういう行動をするのか興味があってちょっとドキドキしながらそのまま近づいて行った。
!!(あと一歩半!)!!
鳩は僕が近づいて来ているのを気づいていなかった。
今、初めて自分が1・2秒後に蹴っ飛ばされる危険が迫っていることに気付いた。(僕も本当に蹴っ飛ばす気はないから歩みは少し遅くなってはいたが)
気づいた瞬間、鳩は
腰を抜かした!
鳩に腰があるかどうかはさて置いて、表すとしたら「腰が抜けた」だ。
鳩は僕に気付いた瞬間全身に電気が走ったかのようなビクンっと痙攣を1回起こし直ぐさまその場から助走をつけて飛び去ろうとしたのだが足がもつれてしりもちをつくように胴体を地面にこすり付けながら必死で羽ばたいた。
まるで巨体を飛び立たせるアホウドリのような離陸をして失速しそうになりながら逃げていってしまった。
人間に例えれば何か物思いにふけってギリギリまで気づかずびっくりして腰を抜かしそうになったと説明するのが一番ぴったりするような状況だった。
でも、鳩って実際、物思いにふけるのかしらん。。。??