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臨床経絡

「経穴ゲートスイッチ理論」に基づいた臨床現場で役立つ経絡治療の紹介

沢山の東洋医学の理論があり、それを学校で学びますがどのように運用するかまでは教えてくれません。「経穴ゲートスイッチ理論」を理解すれば知識が臨床に活かせるようになります。

ここでは「入門」「症例集」「臨床ひろば」「異論な医論」の4つのテーマに分けて紹介しています。

異論な医論

症状があれば病名はつかなくても東洋医学では治療ができる

私は様々な経絡理論を基に鍼灸治療を行っています。

経絡理論を基にすると患者さんが訴える場所だけに鍼をするということはまずなくてその場所の経絡に関係する経穴に治療点を求めて症状の存在する箇所以外のところにも施術することが日常です。


だから例えば、膝が悪くない方にも膝の周りに鍼を打つことはしょっちゅうです。

そういう時、膝関節がかなり変形していて見るからに痛そうだけど

患者さんが受診された時の訴えには膝の痛みはなかったなと気になって「膝は何ともないのですか?」と聞くと「はい、昔は痛い時期もあったけど今は痛くないし正座もできます」という返事が返ってくることがあります。


臨床を始めた頃は私も西洋医学の影響がとても強く東洋医学的な診かたが未熟だったのでなぜ痛くないのか不思議でした。

しかし、臨床を重ねていくとそういう患者さんは結構たくさんおられることに気づきました。


今風に言えばfactの認識ですね。


東洋医学はfact認識の積み重ねです。一般には経験医学なんて言いますがfact認識を積み重ねて得たBIG DATAを二千年以上かけて沢山の臨床家の評価を経て淘汰された信頼性の高い医学です。


話を戻すと東洋医学的考察でしたらこのような症例がなぜあるかは簡単に説明できます。

つまりこの場合変形(器質的に異常な形)した膝でも気が十分に交流していれば症状は出にくいということの証だと思います。

逆に言えば器質的異常がなくても気の交流がうまく行われなければ何らかの症状が現れる可能性があるということも言えます。


つまり、普通膝が痛いと言って整形外科に行けば医師はレントゲン像の変形部分を指差してここがこれだけ変形しているから痛いのだと説明すると思います。そしてそれに沿った治療が計画されます。

しかし、実際にはその変形が今の膝の痛みの原因ではないかもしれないということが否定できないということなのです。


もう少し説明を加えると器質的異常がなくても精神的ストレス(特に怒り)があると膝の内側が痛くなることが良くあって、そういう時は関節に変形や炎症がないのに歩けないほどの痛みを感じることがあります。


もし、その時に仮に既に膝関節に変形があったらその変形が痛みの原因だと決めつけられてしまう可能性はとても高いのです。

しかし、その場合怒りの原因が解決しない限り整形外科的なアプローチを続けても痛みは取れないしそうこうするうちにそれまでなかった関節やその周囲に炎症が引き起こされて益々関節症状は複雑になっていくのです。


具合が悪くて病院にかかったけれど検査で異常が見つからないと「異常なし」と言われてガッカリする患者さんはとても多いと思いますが、それは今の西洋医学の検査が人体の不思議を全て調べ尽くせるわけではないので症状が起こっている原因を具体的に指差せないだけの話です。

「異常がない」のではなく「あなたの言う症状を説明できる根拠を今の科学力では見つけることができませんでした」と言うのが正しいのです。


ところが東洋医学的に言えばなぜ症状が起こっているかは病名は付けられなくても「気の流れ」で全て説明できます。

しかし、誤解されないように付け加えれば、説明できるから全て治せると言うことではありません。

なぜかと言えば全ての症例において「気」の調整ができるわけではないからです。


患者さんがどれほどの「気」を有しているかによって簡単な症例のように見えても治せないこともあれば奇跡のような回復を見ることもあります。

「気」は「自然治癒力の基」であってこれの多少によって治療効果に差が出るのです。


「気」は現代の科学力では可視化することも計量することもできませんがいずれ科学が東洋医学を正しく評価できるところまで発達することを期待しています。

私としては量子力学の完成によって観察や計量できるようになるのではないかと期待しています。

オミクロン株と疎経活血湯

Covid-19ワクチン(以下ワクチン)の副反応軽減に疎経活血湯が有効だと言うことはこの一年の経験で確信していたがCovid-19(以下コロナ)の変異のスピードがとてつもなく早いので果たして治療薬として有効であるのかは確信が持てずにいた。

変異がなければ治療薬として充分に利用価値があるのはみえていたがオミクロン株に至ってはワクチンは感染予防には役立っていない印象が強いので当然「疎経活血湯」も効果がない可能性はあった。

しかし、そうなるとオミクロン株は「全く別物のウイルス」として扱った方が妥当だと言うことになる。

オミクロン株以前は「全身性血管炎」をきたすウイルスであったものが何回も変異を繰り返した結果、主に上気道炎から始まる熱性の感染症になってしまったかもしれないとも考えられるからだ。

もしそうであれば「疎経活血湯」は治療薬としては第一選択肢ではなくなる。

しかし、ワクチンは相変わらず初期のウイルスを基にして作られているので副反応軽減目的に使うのであれば「疎経活血湯」はまだ有効だと思っている。(今秋にはオミクロン株ベースのワクチンが出てくる)

だから、当初、オミクロン株以降の治療薬としては喉の痛みと発熱が初期症状だと言うことを鑑みれば第一選択肢は「小柴胡湯加桔梗石膏」が妥当なのではないかと考えていた。

しかし、私の臨床現場で自分の目で確かめられるのは今までは予防接種後の患者さんの状態に限られてきたので治療薬として果たして「疎経活血湯」と「小柴胡湯加桔梗石膏」のどちらがより妥当なのかは判断ができないでいた。

ところがオミクロン株以降は感染の広がりが大きく流石に私の周りにも感染者が頻繁に出てくるようになった。

また、オミクロン株に感染した人で後遺症が残ったケースの報告が沢山上がってくるようになると軽症の場合はいかにも普通の上気道炎のように見えるが重症化したり後遺症が残ったケースをみればやはり「血管炎」が引き起こされた結果によるのだなと想像するようになった。

一例だが、先週初めコロナに感染した患者さんに「発熱がある間は疎経活血湯を連続服用してみては」とアドバイスしてみた結果、倦怠感はなく発熱はあるが最高38.5℃止まりでそれも初日だけで、それから2日間は37℃4日目には36℃台に下がってしまった。

最後まであったのは喉の痛みだった。

これらのことから考えつくのは予防接種の副反応軽減の為だけでなく、治療と後遺症予防のためにも「疎経活血湯」がまだ有効に働くようだということ。オミクロン株以降の感染で喉の痛みがある時は「桔梗石膏」を併用するのがより良いのではないかと思うようになった。

Covid-19(コロナ)と漢方薬

昨年の6月7日の投稿の再投稿です。

株式会社 ツムラへ「疎経活血湯」の件で問い合わせたところ以下のような回答がきました。
平たく言えば「医師に相談して同意を得られれば使ってみても良いのでは」ということでしょうね。(最後に問い合わせた内容を添付しております)

古賀はり灸院 古賀 信一先生

お問い合わせをいただきありがとうございます。
「疎経活血湯と新型コロナウイルス」についてご回答いたします。
現在のところ、新型コロナウイルスに効くという日本の漢方製剤の実証データはありません。

しかしながら、古来より、熱に対しては「葛根湯」、「麻黄湯」など下痢に対しては「葛根湯」や「五苓散」などにて対処を行い、インフルエンザなどのまん延を最小限にとどめてきたのが日本の伝統的漢方医学であると考えております。

疎経活血湯についても、接種後の筋肉痛や関節痛などの軽減に効果がある可能性はあると考えます。

症状に応じて、医師の判断のもと、種々の漢方薬が選択されるべきと考えます。
ご理解賜りますようお願い申し上げます。

■問い合わせの内容

株式会社 ツムラ殿

疎経活血湯の効能評価についてご提案です。
現在、貴社の当剤への効能書きでは「筋肉痛、関節痛等」となっておりますが、私なりに文献で確かめてみると疎経活血湯は血管炎、血栓症への処方であり、その結果として筋肉痛や関節痛が生じていると考えるのが妥当ではないかと考えました。COVID19は全身性の血管炎を起こす感染症なので私の患者さんで医療従事者の方々に私の見解を示したところ、それに興味を持たれた20名程が予防接種の前後に自主的に疎経活血湯を服用されました。
2回目接種後の症状としては副反応と思しきものは掌、足底の軽い焼灼感が1名(40代)、38°C代の発熱が1名(20代)でした(他は無症状)。
この結果が何を意味するのかしないのかは私の本来の研究の領域ではありませんので私見は述べませんが貴社に於かれましてはCOVID19に対する漢方薬のひとつのアプローチとして考察に値するのではないかと思いました。
ご検討されることを期待します。

コロナウイルスと東洋医学

中国発のコロナウイルス感染は今やパンデミック寸前までの規模になってしまった。
報道がされてから今まで東洋医学者としてずっと注視してきたことがある。

病名治療の西洋医学と違い東洋医学は対証療法であるから未知も既知も区別なく目の前の症状を弁別すれば治療方針は正しく立てられる。

おそらく特効薬とはならないだろうが重篤化を防ぐには東洋医学は有効な手段のひとつになると確信している。

たとえば最近、インフルエンザと診断されると麻黄湯が処方に加えられるケースが増えてきているがそれがその良い例だ。
専門的に言えばインフルエンザ=麻黄湯と言うのでは決してないのだがインフルエンザの場合ザックリととらえれば麻黄湯でカバーできるケースも多い。

だからコロナウイルスは中国発だったのでしばらくしたら重篤化を防ぐ効果的な漢方薬の処方が示されることを当然のように待っていた。
しかし、私の知る限り未だに何の発信も見当たらない。それで自分で証を立ててみたいが情報が少なくてどうしようもない。

喉の痛みは喉のどの辺りにどんなふうに痛むのか?
咳はどんな咳なのか?乾燥した咳か?湿潤な咳なのか?
痰はあるのか?色は?粘稠度は?
脈状は?
腹は?
その他の症状は?等々

40年前学生の頃、香港人の尹浩明(ワン ホーミン)さんから聞いた話を思い出した。
尹さんは北京中医学院で学んだ人で当時は明治鍼灸短期大学で私と同期だった。

ある時、彼は中医学教授の黄先生から傷寒論紹介の小冊子の翻訳を依頼されたのだが彼はひとりではできないと私に翻訳を手伝ってくれと言ってきた。
彼は日本語はペラペラでダジャレだって下手な日本人より笑えた。

その彼が翻訳に自信ないから手伝ってくれと言うのだ。
実は日本語はペラペラだが大阪弁しかできないのだ。
本に書けるような日本語はできないと言う。
だから、彼が翻訳した大阪弁を論文調に直してくれというのだ。

とても光栄なことだったが当時私は湯液学をほとんど身につけていなかったので彼が語る内容が充分理解できなかった。
これではまともに翻訳なんてできないので先ず私が湯液学の基礎を学ぶ必要があると思って彼に湯液学の教授を請うことにした。
お陰で湯液学の基礎は身に付けることができた。

前振りが長過ぎたがその時に彼から聞いた話を今回思い出したのだ。

ある時、私が「日本では東洋医学(鍼、灸、漢方など)は歴とした医学であるのに西洋医学と比べると法的にも世間的にも低く見られているが中医学は中国国内ではどういう位置付けにあるのかな?」と聞いたところ彼の返事はこうだった。

「実は中国国内でも日本と同じで西洋医学の方がステイタスがあって学生にも人気だよ。逆に中医学に興味を持つ者は少ない。特に湯液学は熟練するまでに時間もかかるので特に後継者が少ない。今国内に屈指の漢方医が自分の師匠も含めて7〜8人はいるが彼らは既に70歳を超えている。このままでは中国から真の漢方医はいなくなるだろうね」と言うのだ。

彼のその時の予言が的中しているとすれば今回のコロナウイルスに対する漢方薬の処方が聞こえてこないのはあれから40年経った今この国難に立ち向かえる力のある漢方医が中国にはいなくなっているということかもしれない。

しかし、繰り返しになるが東洋医学、特に漢方薬はコロナウイルス感染者の重篤化を防ぐのに役立つはずだと確信している。
 

鳩でも!?

人間の生理的な現象の不思議を自分なりに解釈しようとするとき、野生の動物の生態からその解決の糸口を見つけることがよくある。(例えば手に汗握る。ドキドキする(血圧が上がる)。 とか耳鳴りが気になって仕様がない。などがそうだ)
だから僕は街を歩いていても人間観察だけでなく動物の行動にも興味がある。

今回の話は特に治療に役立つ話ではないが僕のそういう日常の中で経験したお話のひとつ。

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仕事場に行く途中のこと。駅前広場には鳩がたくさん群れていて僕の目には何もありそうにない地面をしきりに啄んでいる。鳩は人間と一定の距離感を持っていて自分たちの方に人間が来るとまず人間を中心にさざ波が伝播するように輪が広がって離れていく。それよりも人間の近づく速度が速いと一斉に羽ばたいて逃げてしまう。

いつもそうだ。鳩はそういうものだと思っていた。あの鳩を見るまでは。

その鳩は一羽だけ群れから外れて地面を啄んではいないが地面をじーっと見ている風だった。何となく気になって足を忍ばせて近づいてみた。初めてすることではないのでこの後鳩がどういう行動に出るかは判っているのだがついやってみたくなるのは僕が子供っぽいからだろう。大人げないと言われそうだがついやってしまう。

普通だったらそろそろ逃げ出す距離になったがその鳩はいっこうに動こうとしない。

??(気づいていない??!!)

もう2m以内まで近づいてしまった!あと3・4歩で蹴飛ばすか踏んづけてしまう距離だ!
頭の中でこのまま真っ直ぐ進むべきか一瞬迷ったが鳩がどういう行動をするのか興味があってちょっとドキドキしながらそのまま近づいて行った。

!!(あと一歩半!)!!

鳩は僕が近づいて来ているのを気づいていなかった。

今、初めて自分が1・2秒後に蹴っ飛ばされる危険が迫っていることに気付いた。(僕も本当に蹴っ飛ばす気はないから歩みは少し遅くなってはいたが)

気づいた瞬間、鳩は

腰を抜かした!

鳩に腰があるかどうかはさて置いて、表すとしたら「腰が抜けた」だ。

鳩は僕に気付いた瞬間全身に電気が走ったかのようなビクンっと痙攣を1回起こし直ぐさまその場から助走をつけて飛び去ろうとしたのだが足がもつれてしりもちをつくように胴体を地面にこすり付けながら必死で羽ばたいた。

まるで巨体を飛び立たせるアホウドリのような離陸をして失速しそうになりながら逃げていってしまった。
人間に例えれば何か物思いにふけってギリギリまで気づかずびっくりして腰を抜かしそうになったと説明するのが一番ぴったりするような状況だった。

でも、鳩って実際、物思いにふけるのかしらん。。。??
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