厳密に評価すればどちらも大切だが臨床でより役に立つのは脈状診です。

脈差診に重きを置くのは「難経」の六十九難を診察治療の中心にしている経絡治療家に多いのですがこのての経絡治療は「間違いは少ないが時として回り道の多い」治療法です。最初の一穴で勝負が決まるようなチャンスでも本治法と称して通り一遍の選穴をしてしまいます。おまけに選穴する経穴の種類も限られていて柔軟性がなく幅がありません。驚くことにその選択肢に「宝探しの宝に値する経穴」が無い場合も多いのです。ただし診立てが間違っていなければドラマチックな展開は少ないが「自動調整機能」によってそのうち何とか治ってきますから継続治療を求める患者さんが多ければ経営は成り立ちます。

この治療法を長年続けている治療家にはまじめで素直な人が多いと思います。私がお世話になった研究会の先生方が全く真面目な方ばかりで素早く治せないのは自分の技術のせいだと思い込んでおられました。その研究会では成果が出ないのは自分の技術が未熟なせいだと思えないひとはサッサと辞めていきましたが私はそれほど素直ではないのですが優柔不断なので悪くはないが何か物足りないと思いつつも20年も付き合ってしまいました。

当時は研究会で自分の説をあまりストレートに披露すると今までお世話になった先生方の自己研鑽の努力に水を差すような気がしていましたので遠慮していましたが自分の説に確信がつけばつくほど誤魔化しが利かなくなってきたので10年ほど前に会を離れることにしました。

それからは「経穴ゲートスイッチ理論」「補瀉論」「気論」を基に治療を組み立ててきましたから六十九難にほとんど頼らなくなりました。その結果、脈差診の必要性が大幅に減りましたがその分脈状診には細心の注意を払うようになりました。

技術的に難しいのは何と言っても脈状診です。脈差診は簡単で初心者でも私の唱える「簡易脈診法」を1日指導受ければできるようになります。乱暴に言えば脈差診はしなくても問診をしっかりすればどの経絡の病症かはは判断できます。

また難しいとは言っても脈状診も毎日研鑚していると診えないものも診えてくるようになります。もし急ぐなら間違いない早道は私と同じように研究会の門を叩いて4・5年研鑚するとよいと思います。まじめにやっている研究会で5年も勉強すれば診えてくるようになります。

脈状診は患者さんの体質・病状・治療の可否など色々なことがそこから判断できますから深めれば深めるほどより役立ちます。仕舞いには脈診をしないと安心できなくなってしまうくらい得られる情報は多いと思います。