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75歳の女性。丸顔の童顔でちょっと太りすぎで皮膚がパンパン張っているので50代と言っても疑われないだろう。友人と会食した際肩こりがひどいならと背中を強く押されて以来胸が痛くなって辛いと訴えている。
この患者さんは馬乗りになられて背中を強く押されたらしい。胸椎の圧迫骨折にならなくて良かった。

患者が胸が痛いと訴えたときにまず確かめなければならないのはそれが胸郭内由来か整形外科的なものかそれ以外(例えば心療内科的なものなど)かだ。
今回は患者が痛みの由来を最初から解説していたし僕が診ても内科的な問題は心配しなくて良さそうだ。心療内科に関してもしかり。
整形外科的に診てみると左第3胸肋関節がやや腫れている。そこを押すと痛みが強くなる。左第3肋骨弓に沿って軽く押してみてもひびや骨折からくる痛みは発現しないので胸肋関節の軽い捻挫と診て大丈夫だと思う。
ここは腎経の流注だから子午的に考えれば大腸経に何か反応があるかも知れないと思い左右の前腕を接経してみた。思惑通りあった。右偏歴。
偏歴と言うツボはよく反応が出るところで当たると結構良い結果を導き出せるツボなので「これは旨くいくかも」と思った。<br />
早速、右偏歴にステンレス2番8分の鍼を和的に施術した。いつもの0番でも間違いではないのだが偏歴を触ってみてその硬結のしこり具合から診て0番だと手技に時間がかかるしその分効果がクリアに見えない気がした(曖昧な言い方しか出来ないが、何となく今回は0番より2番という感じ)。

20秒ほど手技をして「胸はどうですか?」と聞いてみると触るとまだ痛いが自発痛も動作痛もなくなったという。
次に流注が腎経と深く関わりのある衝脈の治療穴である公孫にステン0番8分を刺鍼した。これは患者が元々太り過ぎであるので日ごろ脾経の調整をしているので併せて使ってちょうど良いと思った。

多くの場合ひとりの患者が持ってる病症の由来の経は多くて2経だ。新たに起こってくる問題や怪我も多くは最初から問題が元々ある経に出ることが多い。この患者も脾腎の相剋に問題があるのでこの場合も背中を強く押されて傷めたのは腎経の流注だった。膀胱経・脾経・胃経の流注でもおかしくはない。しかし小腸経に起こる確率は少ないと思う。

次に左第3胸椎の棘突起左縁を診てみると圧痛があるのでここにも同じように施術した。
病症が胸肋関節部に有る場合は胸椎棘突起部を胸椎部に病症が有る場合は胸肋関節部を診るのは怠ってはいけない。必ず治療すべき箇所が見つかるはずだ。

今回は軽い胸肋関節の捻挫だったのでこの1回の治療で後は寛解治癒した。

余談だが。あんま・マッサージ・指圧には国家資格の免許制度があるが鍼と違って免許のない者でも似たようなことは出来る。だから子供がお小遣い稼ぎに親にあんまをしたり親しい者同士で肩を揉み合ったりすることは良くある話だろう。中には器用な人がいてプロ顔負けの手さばきを持っている人もいる。ただ手さばきだけだったらプロも認めるような者でも無資格者には変わりない。<br />あんま・マッサージ・指圧はれっきとした医学なので理論もあるし技術論もあり中には危険も伴う場合もあるから国家資格が必要なのだ。医療行為として足りるだけの理論も技術も要求されるべきものなのだ。ただ揉むのが上手だったら認められるというものではない。(ただし営業目的でなければ法的には何の問題もありません)<br /><br />カイロプラティック(整体)も米国由来の手技療法で国家資格の柔道整復術(整骨術)とよく似ているが国家資格ではない。国家資格ではないので基礎的医学の知識の習得の義務は無い。即効性があって有益な場面も多い手技療法なのだが日本では医療行為として認められてはいない。最近は養成学校も整備されてきたので質の高い整体師もいるが30年ほど前は数日講習を受けて会費を収めれば免状がもらえたので整体師の質のばらつきは鍼灸師どころではない。
以前は平気で行われていたがあまりにも事故が多いので頚部・腰部に関しては厚生労働省から禁止された施術条件項目があることは一般の方々にはあまり知られていない。(大雑把に言えば脊椎にヘルニアなど何らかの障害があったり骨粗鬆症があればやってはいけません)
カイロの施術を受ける場合は術者が基礎的な医学の知識があるか良く見極めた方がつまらない事故に遭遇する危険を避けられるだろう。一番多い事故は圧迫骨折だ。