昔、「クシャミ3回ルル3錠」という風邪薬のCMコピーがありました。私が小学生の頃、TVがまだ普及して間もなかった頃の話です。このコピーは当時の私にとって相当のインパクトがあったらしく今でもクシャミをすると「クシャミ3回ルル3錠」というフレーズが頭の中に浮かんでしまいます。最近は「風邪の引きかかりに葛根湯」というフレーズが巷でよく聞きますね。
しかし、これらは厳密に言えば間違いです。クシャミに限らず咳・鼻水などは必ずしも病気の「症状」とは言えません。身体の自動調整機能の一つの「反応」である場合もあるので「症状」なのか「反応」なのかをみわける必要があります。「反応」だけの場合は原則として治療の必要はありません。
では「反応」とはどんな現象かといえば
- 冷たい空気を吸い込んだ時その冷たい空気が直接肺に入り込んでしまうのを防ぐために、また埃などの異物を吸い込まないために入りかかった冷たい空気や埃を押し出すためにクシャミが出ます。またクシャミによって筋肉が強く収縮するので筋肉が発熱しますから寒さに応じる身体の状態を作ることが出来ます。
- 鼻水が出ることで鼻腔が狭まるので急激に流入するのを妨げて奥に行く間に体温によって暖められ極端に冷たい空気が肺に入っていくことを防ぎます。また異物を吸着してそれ以上奥に入らないようにして押し出す働きもします。
- 鼻を通り抜けて冷たい空気や異物が奥に入り込むと同じようにその侵入を防ぐために咳が出ます。
これら「反応」はその反応の要因がなくなればその必要なくなりますから身体が温まったり寒さに慣れてしまうとクシャミは治まりますし異物が押し出されればクシャミも鼻水も咳も治まります。だから朝起きたときにクシャミが出たとしてもひとしきり出たら治まってしまうのは「寒冷刺激からの反応」で「風邪の症状」ではありません。反応には個人差がありますから一々反応する人もあれば反応が鈍い人もあります。
つまり「クシャミ3回」では「風邪」を引いたと判断するには早すぎるということになります。もし風邪の症状であれば風邪が治ってこないと症状は治まりませんから暫く経っても治まらないときに「風邪」かもしれないなと判断しても遅くないと思います。
また元々風邪を治す薬というものはこの世に存在しません。症状を緩和するだけです。すべて人体の自動調整能力によって解決するしかありませんからまずは安静が一番です。鍼灸は調整能力を最大限引き出しますから風邪を引いたときもお役に立てます。
葛根湯の話は次回にお話します。
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