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臨床経絡

「経穴ゲートスイッチ理論」に基づいた臨床現場で役立つ経絡治療の紹介

沢山の東洋医学の理論があり、それを学校で学びますがどのように運用するかまでは教えてくれません。「経穴ゲートスイッチ理論」を理解すれば知識が臨床に活かせるようになります。

ここでは「入門」「症例集」「臨床ひろば」「異論な医論」の4つのテーマに分けて紹介しています。

臨床ひろば

甘流四穴鍼

四象医学の甘盛在君から頂いた四穴鍼。鍼柄の量感に比べて鍼体が比較的細長くて手にした時何かしっくりいかなかった。それでもこのまま使わずにお蔵入りするのは勿体ないので何とかならないかと考えていて思いついたのが四穴鍼の鍼柄に甘流テイ鍼の鍼体を差し込む形で合体させることだった。研究仲間のM先生のお兄さんが宝飾関係の技術者なので無理を言って改造して合体してもらったのが下の合体甘流四穴鍼だ。小さく開けてあった穴も少し広げたうえで実際の灯篭のように四穴は貫通してもらった。

さてその使い勝手だがこれが中々良いのだ。甘流テイ鍼で使っていたのと同じような状況下では以前と同じように使えるしそれ以外の状況でも新たに使える幅が増えたような気がする。具体的に言えば洪脈やそれに近いような脈状、身熱が潜在的に診られるような状況でこれらの脈を落ち着かせるのにはよく適しているような気がする。これから先、繰り返し臨床で試して行くうちに何か結論めいたものが見つかるかもしれないと思っている。甘君のお陰で良い道具と巡りあえた。鍼術は深くて面白い。感謝。

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2007/8/4

甘流鍉鍼(四穴鍼)

四象医学の甘盛在君から又々貴重な鍼を頂いた。
四穴鍼と言う鍼柄にとても手の込んだ細工のしてある韓流鍼だ。鍼柄の長さはおおよそ40mmその鍼柄にくまなく刻みが入っている。またその鍼体よりの部分幅10mm程は四つに面をとってあってそれぞれの面の中央に直径1mm程の穴がひとつ反対面まで貫いて合計四つの穴があいている。鍼の名前の由来はここからきているらしい。つまり見たまんまと言うことだ。
甘君によるとこの鍼の由来は灯籠の形であって風水と関わるらしい。
詳しい使い方は甘君も研究中とのこと。ならばこちらも勝手に色々試してみようと思って臨床で使ってみている。今のところ先に頂いた甘流テイ鍼ほど「この鍼でなければ!」と言う場面をイメージすることはあまりない。ただ風水に由来しているとなればこの四つの穴の向く方向を考えて使うべき鍼なのではないかと考えている。具体的に言えば方位または経絡の流注の方向。特に任督には関係がありそうだ。
早速試してみた。中カン穴に鍼を当てて気を窺ってみる。そのままでは甘流テイ鍼ほどにはぐっとはこない。もう少し鍼体を太く短くした方が気も動きやすく扱いやすいかもしれない。さて鍼の軸を静かに回していくと気の動きに僅かに変化があるようだからやはり方位や流注との関係は無視できないのかもしれない。しかしそうなると患者の横たわる方向と方位の関わりまで影響するのかも知れないから話はややこしくなってくる。それにそこまで気を配ってもそれによって動かされる気の量がそれほど劇的でないようなので甘流テイ鍼の時のようにわくわくした気分にはならない。これは自分の技量や選んだ穴によっても結果が違うはずなので簡単に決め付けることは出来ない。しかし少し手を加えてみる価値はありそうなので少し鍼体をいじってみようと思っている。
2007/4/26
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甘流鍉鍼

甘盛在(カム・ソンジェ:Song Jae Kam)君(華山針断院門主)から電話をもらった。

卒後交流はなかったし学生の頃もそれほど交流があったわけではなく何事かと思ったが僕のHPを見つけて僕の事を思い出したらしい。

学生の頃の甘君の印象は真面目なマイペースの左利き、記憶では時々彼の方から僕に声をかけてくるがそれは殆どが鍼灸についての真面目な内容の質問だった記憶がある。僕自身はみんなと同じ勉強をしていたわけだから当時鍼灸に関して特別秀でていたわけではない。ただ父が鍼灸師だったので業界の現実を家族の立場で良く知っていたのでここで普通に勉強していたって卒後直ぐに開業できるだけの技術は身に付かないというのは最初の年に痛感していた。だから2年目からは学校を毎月サボって京都の山奥から東京の東洋はり医学会の本部講習を受けに行っていたのでクラスのみんなからは変わった男だと思われていたのかも知れない。確かめたわけではないけれど甘君が僕に興味を示したとしたらそんなことが理由だったかも知れない。

「鍼灸は技術だ」なんていつ甘君に言ったかは記憶にないのだが甘君の中で何十年もその言葉が生きていたという彼の話を聞いて驚いた。確かに今もその気持ちは変わらないしその時もいい加減な気持ちで言ったはずはないのだが言った自分以上に重く受け止めていた甘君のその後を思えば言葉の大切さを痛感する。


前置きが長くなったがその甘君から珍しい鍼を頂いた。手紙に添えて入っていたのだが包みを開いて思わず息を呑んだ。それは日本刀が持つような妖気を放っていた。妖気というのは表現として良くないかも知れないが日本刀が武士の魂だとすれば鍼は鍼灸師の魂だ。甘君の説明では正式な名称はよく判らないが韓流鍉鍼と考えれば良いとのことだが一般に知られている鍉鍼と比べると鍼尖が鋭利である。
鍼尖は鋭利に研ぎすまされ根元に向かって次第に太くなって鍼体を形づくりほぼ同じ太さで鍼柄(直径約1mm)と繋がっている。鍼体の材質は鋼ではない。ステンレスのようにも見えるが何か銀かコバルトが混じっているような気もする。以前に藤本蓮風先生の講演を受講したときに先生が古代鍼と言って使っておられた物によく似ている。甘君の話では数年前帰韓した際に買い求めたが今は作る者が違っていてこれ程出来が良くないらしい。どこの国も後継者を作るのは難しいのかも知れない。

使ってみると意に違わずドラマチックに気が動く。1本の鍼で動かせる気の量が断然多いからこの鍼を初めて手にした者は自分の技術が急に上手くなったような錯覚に陥る者も多いだろう。だがこういう鍼は術者の気を必要以上に消耗することがあるから使い方を間違えないようにしないと術者は体を壊しかねない。

当に妖刀なのだ。使い方次第で術者諸とも生かしも殺しもする。

10数年前に気功の真似事を覚えて自分のキャパも考えずやたら患者に試していて体が変になりかけたことがある。一緒にやっていた研究会仲間の一人はとうとう体を壊して精神まで病んでしまった。最初、自分自身も気が動くのが面白くていい気になって一日中掌をかざしてやっていたところ次第に幽体離脱とでも言うのか体の実体とその宿主の自分とに1~2mmのずれを感じるようになった。「これはいかん。自分の分を越えたことをしている」と直感してそれ以来自分の念を必要以上に使って患者の気を動かそうとする方法はやめてしまった。平凡な鍼灸師はそれで良いと思っている。自分の分の範疇で最高の仕事が出来るように努力すれば良い。自分を助けてこそ人も救える。

この鍼のように気を大きく動かせる道具も同じように使い方次第では自分の分を越えてしまっていることに気付かないことが往々にしてあるから使い方には注意が必要だ。

使ってみると見た目に違わず良く気が動く。良く気が動くからもっともっとと自分自身にとって必要な気までも使ってしまい術者が体調を壊してしまう危険性があるところがこのての鍼の難しいところ。それでも旨く使えばちょっと手強い病症をすんなりと改善することが出来たりするからひとつ持っているととても便利だ。

例えば先日「鍼は初めてではないが以前他の鍼灸院で受けた鍼治療が耐えられないほど痛くて途中でベッドから降りて逃げるようにして帰ったことがある」と言う初診患者が来た。今回は知人の紹介で「痛くない大丈夫だから」と説得されて治療を受けてみる気にはなったが怖くて怖くて緊張が解けないと言う。確かに脉を診ると緊・数・沈・細・・・緊張の極みだ。「これはちょっとでも鍼響を感じたらそれ以上は治療は出来そうにもないな。最初の1本目が肝心だこんな時こそ韓流鍉鍼だな」と判断して一通り問診を済ませて治療方針も決めたところで更に問診や脉診や切経の流れを断ち切らないまま右の神門穴に韓流テイ鍼を置いて和法を施した。患者は僕が既に鍼を始めたとは気付いていない。患者との会話は途切れさせないようにしながらあたかも脉診か切経をしているようにしながら気が動くのを待っていると10数呼吸程して押手に感じるものがあったので鍼を取り患者に腰の具合を聞いた。腰の痛みは患者の意に反して無くなってしまっていた。不思議がる患者に今右手を触っていたのは実はあなたが怖がるといけないから鍼をしていることを隠していた。腰の痛みが取れたのは今鍼をしたからだと種明かしをした。患者は鍼響もなくて症状が取れるなどと言うことがあるなんて考えてもいなかったみたいで狐に鼻を摘まれたみたいにしていた。

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この症例は本来は単純な腰痛ではあるが患者の不安が大きいことを考慮して心経から子午的に胆経を調整した。加えて言えば少々根深い病症であっても気の流通の不調和が改善されるとその分だけは即座に症状が軽減消失する。そういう目的の鍼をするときにはこの韓流テイ鍼は優れた道具だ。脉状の保ち具合からしても一般的な日本の鍉鍼よりはるかに優れていると思う。
ところでこの鍼は甘君から頂いた大切なものなのでそれを記念してネイティブでは発音が違うかも知れないが僕自身は勝手に甘流鍉鍼と呼んでいる。2007.3.17

「ねりもぐさ」による灸治療の紹介

MT温灸器という温熱治療器の熱源に使う「ねりもぐさ」を使った灸治療を紹介します。(写真参照)

「ねりもぐさ」の効能は従来の「艾」を使ったお灸と何等変わりはありませんが「艾」にはない優れた特徴が幾つかあります。以下にそれを列挙します。

  1. 瘢痕が残らない
  2. 施術に技術を要さないので家庭での治療が簡単
  3. 患者が簡単にツボの存在を実感できる

1.の瘢痕が残らない理由は直接焼灼しなくても輻射熱によって点灸と同じような温度変化を得ることができるからです。やり方は簡単で予めマジック等で穴所に目印を付けておき点火した「ねりもぐさ」の尖端をそこに近づけるだけですから火傷になりません。近づけ方を工夫することで温灸的な温熱効果から直接灸(七分灸)的な効果まで得ることができます。

2.技術が要らないと言うのは「艾柱」を揉んだり穴所に立てたりする手間がなく印に近付けるだけで良いからです。

3.ツボの存在を実感できるというのは従来の直接灸は瘢痕の上に繰り返し施灸するのに対して「ねりもぐさ」の場合は印の付近(半径3-4mm)に亘って照射の位置をずらしてみると必ず他とは熱感が違うところがあります。おそらくそこは温点なんでしょうが患者さん側からすればよく染み入る刺激として感じます。そこがツボだと意識を誘導すれば治療意識が高まります。経験から判断すればツボと温点はかなり近いところにもしくは同じ場所に位置するのではないかと思うので科学的に証明はされていないですがそれを患者さんに「強く感じているところがツボですよ」と言ったとしても全く嘘にはならないと思っています。

「ツボを感じる」もうひとつの利点は患者さんが自ら施灸した場合はこのツボの位置を正確に把握しながら出来るという利点です。実はこの利点こそが「ねりもぐさ」の最大の特徴です。これが有る故に患者さん自身が自宅で行う灸治療への意欲が高まります。臨床家は患者さんに灸点を下すときに患者さん自身でできる範囲のツボの組み合わせを考えてあげると良いと思います。幸い四肢には重要なツボが沢山あるのでこれらを旨く組み合わせると自宅でかなりの治療効果を得ることができます。


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  • さて鍼灸師には視力障害を持っておられる方も多くおられます。そういう方々は鍼灸師と言いながら実際には灸治療は自分ではできませんでした。しかし「ねりもぐさ」の灸治療はその手さばきが鍼治療の手さばきと良く似ているのでもしかしたら視力が無くても「ねりもぐさ」を使えば灸治療ができるかもしれないと思いました。しかし私は幸か不幸か視力があるのでいくら私が視力が無くても灸治療ができますよと呼びかけたところで説得力がありません。やはり実際に視力のない鍼灸師の先生に使ってもらって視力のない時の手さばきを工夫してもらわなければならないと思いました。当時お世話になっていた研究会の仲間で松尾光敏先生は視力障害者ですが技術も確かで何より進取の気性に優れている方なので彼に託せば何とかなると思って「視力障害者が誰でもできるねりもぐさ灸の手さばき」を研究してくださいと丸投げしました。以下はその松尾光敏先生のレポートの抜粋です。視力障害のある鍼灸師の先生方には必読の一文です。
  • 「ねりもぐさ」を利用した視覚障害者による灸治療

  はじめに

 東洋医学における治療の中で大きな柱として鍼治療がありますが、その柱を支えるものとして大

きな役割を果たしているのが灸治療ではないでしょうか。事実今日まで数多くの灸による治療法が

伝えられており、現在も多くの治療家が灸を応用した治療を行っています。そして、その応用範囲

の広さと灸ならではの確かな効果がそれを示しています。しかし、これらのことを知りながらも視

覚障害のために自ら灸治療をすることを断念されていた人が沢山おられたと思いますし、また私自

身もその1人でもありました。

 今までにも視覚障害者が灸治療を行うためのものは、いくつか考案されてきましたが、時間と手

間の掛かる器具を使用するものでした。私自身いくつか購入し試したこともありましたが、視覚障

害者用に開発されたものはもとより、それ以外のものでも、患者の多様な訴えに対応し、迅速に行

えるような治療家の実用にかなうものは無かったように思います。

 このような中、ずっと思ってきた「視力が無くても自ら灸治療をすることができる」願いが叶う

方法を思いつくきっかけを与えてもらいました。

それは、私が以前に所属していた研究会の治験発表で古賀信一先生が「ねりもぐさの応用」を発表

されたのがヒントになったものです。

この古賀先生の方式を簡単に説明させてもらいますと、点火した棒灸である「ねりもぐさ」を目的

の皮膚面に近づけたり遠ざけたりするなどして、いろいろな手さばきにより目的に応じた各種の温

熱を与えるというものでした。しかし、私のように視力がないものが、燃焼している「ねりもぐさ

」を、そのまま使用して安全且つ効果的に行うことは非常に困難なことです。それで閃いたのが、

瓶の蓋の様な金属製の網を利用することでした。

それから試行錯誤の末、治療室で使えるものとしてできたのがお茶こしの網を使い皮膚に接する面

をガーゼで覆うものになりました。これは、とても安価で簡単に作製できるもので、私としては「

ねりもぐさ」専用のMT温灸器やその他の施灸器よりも使えると自信のもてるものができたと自負

しています。

 そこで、私が実践している助手がいなくても視覚障害者自ら行うことができる実用的な灸治療を

紹介させていただきます。

  1 「灸ネット」と「ねりもぐさ」

 これより、現在私が臨床で行っている灸治療を説明しますが、使用するお茶こしで作製したもの

を「灸ネット」と名付けて表すことにして、先ずこの「灸ネット」の作り方と「ねりもぐさ」につ

いて説明します。

  「灸ネット」の作製方法

 用意するもの 

1:茶こしネット

2:ガーゼ

3:輪ゴム(小さいものが作製しやすい)

4:作製時の道具として単4電池かまたはそれに似たような硬い棒状のもの

 この茶こしネットは、お茶をいれるときの急須の中の小さい穴が沢山ある出口のところにとりつ

けて、お茶を注ぐときに茶の葉が出てこないようにするための、きめの細かい金網でできたもので

す。この種のものは、大小直径3センチ程で2種類ありますが、構造的には同じで、どちらでも利

用できます。しかし、実際の使用に際しては大が適しています。

この茶こしは、急須を販売しているところが購入しやすく、最近では近くの瀬戸物屋で購入し価格

は、一個大が150円でした。

 作製方法

 1:この茶こしには急須の中にとりつけるための針金がついているので、この針金を取らなければならない。そこで、外側の底にあるぼっちをつまんで引き抜いて取り去る。

 2:引き抜いた針金が付いていた部分の毛羽だったところを平らにするために、固い平らなところで電池のマイナス側などを利用して軽くたたき、指で触っても刺激がこないようにする。

 3:針金を引き抜いた状態の形のままでも使えるが、なるべく経穴をねらえるように皮膚面に当たる底の部分を1センチから5ミリ程の大きさに尖らすために細い棒や指先を茶こしの中の底面の中心に当てて、その外側を指でつまむようにして円錐形状にする。この際、慎重にしないと網が破れるおそれがあるので、少しづつ形を整えるようにする。

 4:温度の調節と皮膚に金網が直接接触しないようにするためにこの茶こしの外側全体をガーゼで覆う。そこで茶こしの縁のプラスチックでできた部分の外側にある溝を利用して輪ゴムで2枚に重ねたガーゼを弛まないようにとめて縁からはみ出しているガーゼを切り取れば完成。

 なお、「ねりもぐさ」の燃焼部を間違って縁に当てても変形させにくくするための方法として、縁からはみ出しているガーゼを切り取る際に、縁から2センチほど余して切り取り、余ったガーゼを灸ネットの内側に折り曲げてプラスチックでできている縁をガーゼで覆うようにしたり、厚手のアルミテープで覆うようにするとよい。また、取り付けるガーゼは2枚が温度のコントロールといくつかの使用法にも対応しやすく最適だと思うが、先ずは自分の体でいろいろ試していただきたい。

  2 実際の使用法

 これから説明する具体的な使用法は、その治療目的により知熱灸的な手さばきと直接灸的な手さばきに分けて説明します。

先ず、鍼をする場合の刺し手にあたる手に点火したねりもぐさを鉛筆を持つような形で持ち、押し手にあたる手の母指と示指で灸ネットの開口部を上にして、その縁を軽く持って行います。

 (1) 知熱灸的な手さばき

 (知熱灸的方法1) 「灸ネット」のガーゼで覆った側の尖らせた部分を目的の皮膚の部位に軽く接触させ、そのまま支持した状態で燃焼している「ねりもぐさ」の先端を灸ネットの中に挿入する形で皮膚面の1センチ程度まで軽快に近づけたり遠ざけたりするのだが、この際一番近づけたときに一時的にとどめる要領で「すーっすーっすーっ」というように10数回程行う。

 (知熱灸的方法2)  「灸ネット」を同じように目的の皮膚面に軽く接触させておき、そのまま支持した状態で燃焼している「ねりもぐさ」の先端を「灸ネット」の中に挿入する形で皮膚面に当たっているところの底面に軽く接触させ、素早く皮膚面より1センチほどまで引き戻し、2・3呼吸とどめて温熱を与える方法もできる。目的によっては、これを数回行う。

 (2) 直接灸的な手さばき

 (直接灸的な方法1) 「灸ネット」のガーゼで覆った方の尖らせた部分を目的の経穴に軽く当てて支持し、燃焼している「ねりもぐさ」の先端を「灸ネット」の中に挿入する形で経穴に接触しているところの底面に極軽く軽快な手さばきで「トントントン」というように数回から10回程度連続的に接触させて温熱を与える。

 (直接灸的な方法2) 「灸ネット」のガーゼで覆った方の尖らせた部分を目的の経穴に軽く当てて支持し、燃焼している「ねりもぐさ」の先端を「灸ネット」の中に挿入する形で経穴に接触しているところの底面に極軽く軽快な手さばきで「トントントン」というように3回から5回程度連続的に接触させる。そして、さらに続けて底面に接触する直前まで近づけて一時的にとどめる要領で3回から5回程度近づけたり遠ざけたりして温熱を与える。

 なお、今回紹介した方式を実際に行う場合には、当然目的や患者の感受性や使用する経穴の違いにより、手さばきの早さやその回数は臨機応変に変化させて対応します。

※ 先の説明で灸ネットの底面に「とんとん」と点火したネリモグサを当てるとい

う強さは、たとえるならば、寸三の2番程度の鍼を軽くもって鍼先を治療用ベットなどに

当てて、鍼がたゆまない程度で行います。

また、患者を扱う間に、「ねりもぐさ」と「灸ネット」の灰は適宜落としながら行います。さらに、私は視力が0であるため「ねりもぐさ」の点火と消火を素早くするためにライターに工夫し、小さな容器に極少量の水を用意しています。これにより、一瞬に消火でき、必要とすれば、消火した直後でも再度すぐに点火できます。

※この点火と消火については、最後に補足で詳しく説明しています。

「灸ネット」は使い方にもよりますが、本体である茶こしが傷まない限りガーゼを50人程度を目安に交換し掃除して使えば、何回でも再利用できます。

  3 治療量の目安

 前もって「強く来たらいってください」と告げて施術しており、ほとんど患者が告げる前に身体の反応で治療量を判断できます。しかし、中には我慢強い患者もいます。そこで、手さばきの早さや穴にもより微妙ですが、先に示した2枚のガーゼで作られた灸ネットを使用した現在のところの私の治療量の目安を次ぎのようにしています。

(知熱灸的な応用)

 先に説明した知熱灸的方法1においては、一度に行う手技を、やや早い手さばきで、その回数を15回程として5回に1回程度底面に軽く接触させる。

より穏やかに行う場合は、知熱灸的方法2によって同じ手さばきを3回程度行ったり、知熱灸的方法1で、はじめの1回のみ底面に軽く接触させて、後は近づける方法のみで8回ほど行う。必要に応じてこれを2回ほど繰り返す。小児の治療ではこれらの回数を半分程度としている。

直接灸的な応用

直接灸的な方法1では一度で連続的に接触させる回数の限度を大人で四肢においては陽経で9回陰経で7回・体幹部においては陽経で9回陰経で5回。小学生は大人の半分。6歳以下は大人の3分の1程度。

直接灸的な方法2では、接触させる回数と近づける回数の順で、陽経では3回と5回。陰

経では2回と3回。小児では、これらの半分程度。


  4 改善点とその対応

 現在思う改善点としては、灸ネットの本体が金網であり特に直接灸的な使用法をした場合、熱をもってしまうことです。できることなら、本体の網の材質を過熱しないものにできれば理想的だと思っています。

そこで、対応としては、次ぎの部位への施術を行う前に灸ネットを自分の手掌や前腕内側に当てて冷えたのを確かめて次ぎの施術を行います。このようにすることにより目的とする正確な熱量を与えることができます。熱がとれるまでに時間がかかりそうですが、ほとんどの場合の治療においては数秒で次ぎの治療に移ることができます。かなり熱くなったと感じた場合でも十数秒程度で冷えます。

(補足)

利用法の説明の中でのネリモグサの点火と消火ですが、先ず、ライターの火口の横にカーテンを吊す針金でできたフックをラジオのアンテナのようにテープで付けています。これで、ネリモグサの先をここに当てることで、確実に素早く点火させることができます。

また、小鉢に極少量の水ヲ用意しておき、消化する方法ですが、下が小さくなっている、お酒を飲むときのお猪口に底から1センチ

ほどのみずを入れておきます。これに、火がついているネリモグサの頭を、一瞬入れると「ジュ」という音がして消えます。しかし、この後でもすぐ再度点火できます。

今は、ホテルの客室に用意されていたウイスキーのローヤルの小さなボトルに金属のネジを瓶の首の下くらいまで詰めたものを用意していて、これにネリモグサの点火した方を差し込んで消化しています。

この小瓶の口がネリモグサの大きさと同じくらいで、大きすぎず小さすぎずちょうどよく重宝しています。

これらを使うことで、点火と消火が晴眼者と同じように簡単にできます。実際の臨床において、この点火と消火が素早く確実にできるかどうかは、とても大事なことです。

これらのことがスムーズにできないと、患者の印象も悪く、本当に利用できているとはいえません。ちなみに、私は、点火済みのネリモグサとライターは常に二つ用意しておきます。

粘っこい痰や乾燥した咳には「麦門冬湯」

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風邪を引いて咳の症状があって病院を受診するとよくムコサールとかムコソルバンという祛痰剤が処方される。このお薬はアンプロキソール塩酸塩という物質が主成分だ。副作用はほとんどなく安全なお薬なので余程特異体質でない限り飲んでも心配ない。ただ効き目と言えば「イマイチ」だ。漢方薬の麦門冬湯も祛痰剤にあたるがこっちの方がよく効く。前にノートで「西洋医学は発展途上でこれからが楽しみ、東洋医学はほぼ完成している医学だが証明がなされていないだけ」と書いたがアンプロキソールと麦門冬湯の関係が正にそれだ。

  • 麦門冬湯の成分は麦門冬(バクモンドウ)、半夏(ハンゲ)、人参(ニンジン)、硬米(コウベイ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)の6種類からなる。どれか一つ欠けても効果は半減する。だがどれがどのように相互作用しているかは本当のところは判らない。しかし判らないと言うのは現代の科学をもってして完璧には説明が出来ないと言うことで東洋医学的にはちゃんと説明が出来る。「葛根湯」のところで書いたように漢方薬だから「証」をたてる。「証」をたてられるということは東洋医学的には整合性を持って説明できたということになる。麦門冬湯は科学的に完全には証明されていないが臨床的にはよく効くお薬として経験的に大昔から使われてきている漢方薬だ。
  • アンプロキソールは「痰に含まれるムコ多糖を分解する酵素を活性化させることで痰の粘性を低下させる。また気管支の繊毛運動を促進し肺胞保護物質の生成を促進させ肺胞・気管支における表面活性物質の生成を促す」というのが科学的に証明されている。

西洋医学では古くから伝承されてきた漢方薬や民間療法に注目して「この作用を引き起こしている主な成分は何なのか」を解明してそれを臨床に役立てようとすることがよくある。研究の結果、もしその主たる成分が特定できたとしよう。普通に考えればその成分だけを純粋に高濃度で患者に処方すればもっとよく効くような気がするがはたしてそうはならないことも多い。漢方薬は考えてみれば不純物だらけだが漢方薬の作用の主たる成分だけを抽出して新しく純度の高い薬を開発してもその効き目が漢方薬よりも優れているかと言うと期待ほどではないものが多い。それが何故かが現代の科学力では説明できないことばかりだ。東洋医学の次元に科学力がまだ追いついていけていない。不純物と思われて切り捨てられている成分の何かが主成分の働きをより強固なものにする為に役立っているはずなのだがそれが何なのかがまだ判らないのだ。

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