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臨床経絡

「経穴ゲートスイッチ理論」に基づいた臨床現場で役立つ経絡治療の紹介

沢山の東洋医学の理論があり、それを学校で学びますがどのように運用するかまでは教えてくれません。「経穴ゲートスイッチ理論」を理解すれば知識が臨床に活かせるようになります。

ここでは「入門」「症例集」「臨床ひろば」「異論な医論」の4つのテーマに分けて紹介しています。

臨床ひろば

オミクロン株と疎経活血湯

Covid-19ワクチン(以下ワクチン)の副反応軽減に疎経活血湯が有効だと言うことはこの一年の経験で確信していたがCovid-19(以下コロナ)の変異のスピードがとてつもなく早いので果たして治療薬として有効であるのかは確信が持てずにいた。

変異がなければ治療薬として充分に利用価値があるのはみえていたがオミクロン株に至ってはワクチンは感染予防には役立っていない印象が強いので当然「疎経活血湯」も効果がない可能性はあった。

しかし、そうなるとオミクロン株は「全く別物のウイルス」として扱った方が妥当だと言うことになる。

オミクロン株以前は「全身性血管炎」をきたすウイルスであったものが何回も変異を繰り返した結果、主に上気道炎から始まる熱性の感染症になってしまったかもしれないとも考えられるからだ。

もしそうであれば「疎経活血湯」は治療薬としては第一選択肢ではなくなる。

しかし、ワクチンは相変わらず初期のウイルスを基にして作られているので副反応軽減目的に使うのであれば「疎経活血湯」はまだ有効だと思っている。(今秋にはオミクロン株ベースのワクチンが出てくる)

だから、当初、オミクロン株以降の治療薬としては喉の痛みと発熱が初期症状だと言うことを鑑みれば第一選択肢は「小柴胡湯加桔梗石膏」が妥当なのではないかと考えていた。

しかし、私の臨床現場で自分の目で確かめられるのは今までは予防接種後の患者さんの状態に限られてきたので治療薬として果たして「疎経活血湯」と「小柴胡湯加桔梗石膏」のどちらがより妥当なのかは判断ができないでいた。

ところがオミクロン株以降は感染の広がりが大きく流石に私の周りにも感染者が頻繁に出てくるようになった。

また、オミクロン株に感染した人で後遺症が残ったケースの報告が沢山上がってくるようになると軽症の場合はいかにも普通の上気道炎のように見えるが重症化したり後遺症が残ったケースをみればやはり「血管炎」が引き起こされた結果によるのだなと想像するようになった。

一例だが、先週初めコロナに感染した患者さんに「発熱がある間は疎経活血湯を連続服用してみては」とアドバイスしてみた結果、倦怠感はなく発熱はあるが最高38.5℃止まりでそれも初日だけで、それから2日間は37℃4日目には36℃台に下がってしまった。

最後まであったのは喉の痛みだった。

これらのことから考えつくのは予防接種の副反応軽減の為だけでなく、治療と後遺症予防のためにも「疎経活血湯」がまだ有効に働くようだということ。オミクロン株以降の感染で喉の痛みがある時は「桔梗石膏」を併用するのがより良いのではないかと思うようになった。

Covid-19(コロナ)と漢方薬

昨年の6月7日の投稿の再投稿です。

株式会社 ツムラへ「疎経活血湯」の件で問い合わせたところ以下のような回答がきました。
平たく言えば「医師に相談して同意を得られれば使ってみても良いのでは」ということでしょうね。(最後に問い合わせた内容を添付しております)

古賀はり灸院 古賀 信一先生

お問い合わせをいただきありがとうございます。
「疎経活血湯と新型コロナウイルス」についてご回答いたします。
現在のところ、新型コロナウイルスに効くという日本の漢方製剤の実証データはありません。

しかしながら、古来より、熱に対しては「葛根湯」、「麻黄湯」など下痢に対しては「葛根湯」や「五苓散」などにて対処を行い、インフルエンザなどのまん延を最小限にとどめてきたのが日本の伝統的漢方医学であると考えております。

疎経活血湯についても、接種後の筋肉痛や関節痛などの軽減に効果がある可能性はあると考えます。

症状に応じて、医師の判断のもと、種々の漢方薬が選択されるべきと考えます。
ご理解賜りますようお願い申し上げます。

■問い合わせの内容

株式会社 ツムラ殿

疎経活血湯の効能評価についてご提案です。
現在、貴社の当剤への効能書きでは「筋肉痛、関節痛等」となっておりますが、私なりに文献で確かめてみると疎経活血湯は血管炎、血栓症への処方であり、その結果として筋肉痛や関節痛が生じていると考えるのが妥当ではないかと考えました。COVID19は全身性の血管炎を起こす感染症なので私の患者さんで医療従事者の方々に私の見解を示したところ、それに興味を持たれた20名程が予防接種の前後に自主的に疎経活血湯を服用されました。
2回目接種後の症状としては副反応と思しきものは掌、足底の軽い焼灼感が1名(40代)、38°C代の発熱が1名(20代)でした(他は無症状)。
この結果が何を意味するのかしないのかは私の本来の研究の領域ではありませんので私見は述べませんが貴社に於かれましてはCOVID19に対する漢方薬のひとつのアプローチとして考察に値するのではないかと思いました。
ご検討されることを期待します。

【継続治療の意義】


東洋医学が得意とするのは「病の芽を摘む」こと「病を根付かせない」ことができるということです。

古人はこれを「未病を治す」と表しました。
継続治療していても何も変わらないかもしれないけれど「芽を摘み」「根付かせない」ことを実現しているのです。
これがとても大切です。

コロナウイルスと東洋医学

中国発のコロナウイルス感染は今やパンデミック寸前までの規模になってしまった。
報道がされてから今まで東洋医学者としてずっと注視してきたことがある。

病名治療の西洋医学と違い東洋医学は対証療法であるから未知も既知も区別なく目の前の症状を弁別すれば治療方針は正しく立てられる。

おそらく特効薬とはならないだろうが重篤化を防ぐには東洋医学は有効な手段のひとつになると確信している。

たとえば最近、インフルエンザと診断されると麻黄湯が処方に加えられるケースが増えてきているがそれがその良い例だ。
専門的に言えばインフルエンザ=麻黄湯と言うのでは決してないのだがインフルエンザの場合ザックリととらえれば麻黄湯でカバーできるケースも多い。

だからコロナウイルスは中国発だったのでしばらくしたら重篤化を防ぐ効果的な漢方薬の処方が示されることを当然のように待っていた。
しかし、私の知る限り未だに何の発信も見当たらない。それで自分で証を立ててみたいが情報が少なくてどうしようもない。

喉の痛みは喉のどの辺りにどんなふうに痛むのか?
咳はどんな咳なのか?乾燥した咳か?湿潤な咳なのか?
痰はあるのか?色は?粘稠度は?
脈状は?
腹は?
その他の症状は?等々

40年前学生の頃、香港人の尹浩明(ワン ホーミン)さんから聞いた話を思い出した。
尹さんは北京中医学院で学んだ人で当時は明治鍼灸短期大学で私と同期だった。

ある時、彼は中医学教授の黄先生から傷寒論紹介の小冊子の翻訳を依頼されたのだが彼はひとりではできないと私に翻訳を手伝ってくれと言ってきた。
彼は日本語はペラペラでダジャレだって下手な日本人より笑えた。

その彼が翻訳に自信ないから手伝ってくれと言うのだ。
実は日本語はペラペラだが大阪弁しかできないのだ。
本に書けるような日本語はできないと言う。
だから、彼が翻訳した大阪弁を論文調に直してくれというのだ。

とても光栄なことだったが当時私は湯液学をほとんど身につけていなかったので彼が語る内容が充分理解できなかった。
これではまともに翻訳なんてできないので先ず私が湯液学の基礎を学ぶ必要があると思って彼に湯液学の教授を請うことにした。
お陰で湯液学の基礎は身に付けることができた。

前振りが長過ぎたがその時に彼から聞いた話を今回思い出したのだ。

ある時、私が「日本では東洋医学(鍼、灸、漢方など)は歴とした医学であるのに西洋医学と比べると法的にも世間的にも低く見られているが中医学は中国国内ではどういう位置付けにあるのかな?」と聞いたところ彼の返事はこうだった。

「実は中国国内でも日本と同じで西洋医学の方がステイタスがあって学生にも人気だよ。逆に中医学に興味を持つ者は少ない。特に湯液学は熟練するまでに時間もかかるので特に後継者が少ない。今国内に屈指の漢方医が自分の師匠も含めて7〜8人はいるが彼らは既に70歳を超えている。このままでは中国から真の漢方医はいなくなるだろうね」と言うのだ。

彼のその時の予言が的中しているとすれば今回のコロナウイルスに対する漢方薬の処方が聞こえてこないのはあれから40年経った今この国難に立ち向かえる力のある漢方医が中国にはいなくなっているということかもしれない。

しかし、繰り返しになるが東洋医学、特に漢方薬はコロナウイルス感染者の重篤化を防ぐのに役立つはずだと確信している。
 

甘流四穴鍼

四象医学の甘盛在君から頂いた四穴鍼。鍼柄の量感に比べて鍼体が比較的細長くて手にした時何かしっくりいかなかった。それでもこのまま使わずにお蔵入りするのは勿体ないので何とかならないかと考えていて思いついたのが四穴鍼の鍼柄に甘流テイ鍼の鍼体を差し込む形で合体させることだった。研究仲間のM先生のお兄さんが宝飾関係の技術者なので無理を言って改造して合体してもらったのが下の合体甘流四穴鍼だ。小さく開けてあった穴も少し広げたうえで実際の灯篭のように四穴は貫通してもらった。

さてその使い勝手だがこれが中々良いのだ。甘流テイ鍼で使っていたのと同じような状況下では以前と同じように使えるしそれ以外の状況でも新たに使える幅が増えたような気がする。具体的に言えば洪脈やそれに近いような脈状、身熱が潜在的に診られるような状況でこれらの脈を落ち着かせるのにはよく適しているような気がする。これから先、繰り返し臨床で試して行くうちに何か結論めいたものが見つかるかもしれないと思っている。甘君のお陰で良い道具と巡りあえた。鍼術は深くて面白い。感謝。

kanryu4ketusin
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2007/8/4
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